本とgekijou

書評のようなものを中心としたblog

2022-07-21から1日間の記事一覧

「なんともいえない一種特別の物質」――梶井基次郎と江國香織

私が梶井基次郎の文章でとっさに思いつくのは、「愛撫」冒頭である。ここで、猫は、二葉亭四迷の「平凡」のポチのようにも、漱石の猫のようにも描かれてはいない。全き作家の感性によって猫は捉えられ、籠絡され、しかして他愛ない円環のなかにとどまり続け…