本とgekijou

書評のようなものを中心としたblog

(日記)味のある改札機のくぐり方

 五月三十一日、鬼生田貞雄研究はつづく。「文藝時評大系」(全七十四巻の頭がオカシイ全集)をもとめて東京都立図書館へゆく。カウンセラーの先生が言っていたとおりに、広尾は本当に、なんでまたこんな処がこんな顔をしているのだ、という不可思議な場所だ。東京は広い、というにしても、広すぎると思われてしまう。六本木の装飾過多というような飾り気ともまたことなる、さらりとした着こなしのお洒落さの街。ランチの価格帯で満足のいく蕎麦を食べて、図書館へ。カードを提げて資料を漁り、出てきたものはたった一枚のコピーだけ。大宅壮一文庫の索引も開いておいたが、鬼生田貞雄の名前がみつかることはない。とほうにくれて、台風の予報だったというのに、雨すら降っていない外に出て、神保町に行って紙袋を重たくする、その重たさの予想をしてはウンザリとなり、観たい映画の時間をしらべるがどこもちょうどいい時間帯ではなく、てきとうに銀座を歩くことにする。

 おりしも反ワクチンのどうしようもないデモの行進のある日だった。皆、貧相な顔をしている。卒業名簿でコイツ頭悪いやつ、コイツ頭悪いやつ、あっコイツ勉強だけはできたけれども頭悪いやつ、というような……すらっと、体育部にいました、というような感じのひとがいない。政治行動に興味をもつような高齢者が多く、赤児などを連れているのは大概は女性の参加者で、その女性の顔がいちばん特徴的で、ああこのひとお喋り好きのバカ、というタイプのひとしかいない……。「X」にそれについての愚痴めいたポストをして、婚約者のためのアクセサリを買い、メゾンエルメスで展示を見て、「ジャポネ」でジャポネの大盛りを食う。隣にすわっている女性客が(ジャポネで食っている女性ですよ。いい女にきまっている)麦茶のポットをとってくれ、と言うので、コップについでやろうとすると、ポットをとろうとする女性の手とぶつかって、水がカウンターにすこし、こぼれた。すみません、すみません、いえいえ、いえいえ、と言い合う。互いにほっこりとしている。

 そんなことがあってニコニコしながら、新宿に帰るべく駅のきっぷ売り場にたつと(先月、Suicaをなくしてしまった……)、券売機の前でずっとぶつぶつ言っているおじさまがいるので、切符を買おうとするついでに「なにかお困りですか」と尋ねる。「これ(反パンデミックのデモの団扇をおじさまは掲げた)できょうここに来て、どう帰ったものだったか」。ふむん。足立区の某市までの料金を調べて、券売機の前でいろいろ教える。味のある改札機のくぐり方となった。

るるぶ東京'25 (るるぶ情報版)

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