本とgekijou

書評のようなものを中心としたblog

(犬の日記)ふたたび六月二十八日からはじまる日記

 レコードショップをハシゴして新宿へと帰る。降雨に人身事故によるダイヤの乱れが生じた新宿地下駅は、それに加えて工事中であることもあって、そこを通い慣れたホストやホステスであっても道に迷うのではないか、という気色である。迷おうが迷うまいが(白状するが私は迷ったのだったが、それはこれまでろくに入ったこともない京王百貨店をめざしていたためでもあった)雨に濡れるか、傘を差すかの選択を随所で迫られ、それが足取りをいちいち鬱陶しくさせる。まったく。気候であれ、女性の言葉であれ、外部からの条件によって自分の行動が制約されることというのはなんとも、ひとを無力にさせ、気を悪くさせるものだ。そのくせ、目指した百貨店に入ると、地階に降りるなりすんなりとめあてのパン屋を見つけることができる。さあ、ここからが迷宮だ、と地下食品売り場で暗然とした気分になっていたところで、ひょいと、パンを選んで雨よけのビニールをかぶせてもらった紙袋に、それを詰めてもらう。翌日は六月二十九日。私は連れとともに昼にそのパンを食した。ロブションのそれのような衝撃があるわけではないが、素朴ながら独自の完成度を誇っている美しいパンであった。

わが町・新宿

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