本とgekijou

書評のようなものを中心としたblog

海外文学

「この世にないもの、この世にとうとうありはしなかったもの」――チャンドラー・荷風・矢作俊彦

探偵小説の場において、文飾に凝るという事。 クリスティをはじめとしたいわゆる「ミステリー」畑とも、あるいはロス・マクドナルドやハメットのような「ハードボイルド」路線とも一線を画した、ただ、「散文」をめぐる美的な判断をよすがとして、探偵がさま…

「もっとも確実なもの、つまり直接的なもの」、または離人症者と創造――カミュ「シーシュポスの神話」

アートの起源 作者:杉本 博司 新潮社 Amazon カミュに「不貞」という短篇がある。 夜の浜辺に夫婦ふたりが横になっている。夜空の星辰に思いをはせた妻が、その時にふと、かくのごとく星に惹かれている自らの心の動きこそが「不貞」なのだ、と云いだす。 ひ…