本とgekijou

書評のようなものを中心としたblog

2024-01-01から1年間の記事一覧

葬儀でかけてもらいたい曲

葬儀でかけてもらいたい曲、という大テーマ、「お題」というやつがあるが、なんにもヒネらずに率直に答えてしまうと、私の場合、ハイフェッツのなにか、ということになる。バッハの無伴奏や、ブラームスではどうも速すぎるから、折角だからベートーヴェンの…

解離性障害と私たち(第一回)

生まれてはじめの記憶をありありと覚えているが、それがいつ頃のことであったのかは分からない。なによりも私がそれを回顧をして、不可思議の念に打たれるのは、ありありと、の部分の逆説的な、構図である。そのはじめての記憶のなかで、私は自分が毎日、満…

数寄屋橋の喫煙所でパンクスについて考える

これは数寄屋橋公園を横に抜けて、インズの横手にいまもある喫煙所がまだ、コンテナ式ではなかったころの話なのだが、もうもうとけぶる吸い殻棄てに水をやり、地べたに転がっている煙草を一本、また一本と拾い集めながら棄ててやっている、アラサーくらいの…

「本屋大賞」的なものが本屋を潰してきたのだとしか思えないから本屋など全部潰れろ

じき十年もすれば町の書店はなくなる、のだそうだ。 そんなことはどうだっていい、とつくづく思う。 新宿の紀伊國屋の本店がなくなったら、大事件であるし、八重洲の本店とかは残っていて欲しいのであったが、書店という場所は私はめっきり、キライになった…

作家の自己意識、または作家と幼年期

私は解離の人間であるから、むかしは、いわゆる幽霊を家のなかでばんばん見ていたものであったし、ドナ・ウィリアムズのノンフィクションにあるような精霊が話しかけてくるといったことも日常であった上に、眠る時に天井の木目をかぞえているうち自然と体外…

小説投稿サイトについて

パートナーに短編小説を読ませて、文意がつかみ取りにくいところ、誤字脱字があるところに付箋をはってもらいながら、ふと、強くおもったのだが、読者というのは本当に怖いものだ。 私は書きたいように書きまくっていたいし、だれにも求められることのないう…

研究者として……

鬼生田貞雄という作家のことを「黒い羊」一篇をもって、再評価されるべき、とまで傲慢なことは云わないし、あまり云い過ぎてしまうと私のなかで嘘になってしまうという問題がある、のであった。しかし、彼の小説がふたたび読者を獲得をして、面白い、つまら…

制作中のグールド

まったく、毎日が大混乱の日々を送っている。自分で望んで、自分でそのようになるようレールを敷いたのだったから、「まったく」もなにもないものだけれども。僻地、福島県郡山市だというのに、私の周辺だけ、歌舞伎町みてえに、ネオンの向こうに役所がみえ…

街歩きの風趣と、一体になっているのが、映画なんだよ

新宿の紀伊國屋書店のすぐ横手の「ディスクユニオン」のクラシックコーナーで、安い現代音楽とか、無伴奏ヴァイオリンとかをあさりながら、友人と合流してメシを食ったり、映画館を観に行ったりする、という流れがあって、そういえば新宿ではもっぱらゴジラ…

(犬の日記)七月十一日

今、たったの十四時。一日の日記を書くのにはまだまだ早い頃合いだが、今書かないと書く時間がとれまい。朝、七時半に起き、ジュリエット・グレコのシャンソンに針を落としてキーパンチをする。途中炒飯をつくって食べて、これには先日、連れと「カルディ」…

母、危篤

書きたてほやほやの自作の短編小説では、危篤状態になっても母親を見舞いに行かない選択をする、男の物語を書いたばかりだというのに、人生なんていうのはおもう通りにはいかないものだし、こちとら気分次第、分裂症、なんていっちゃなんねえ、滅茶苦茶で生…

創作論は反創作論である――中原昌也と古井由吉の対談をそえて

古井 そこなんです。それが年がいったら、自分が書いているんじゃない、誰かに書かされているんだ、という気がしてきたんだ。といっても、私は出版社とかマーケットが書かせてるっていうほどの作家じゃないですからね(笑)。なにか、言葉そのものが表現を求…

人生に大切なものとしての仕事、友人、喪失――ニール・ヤングの「Bird's」をそえて

われら人間たちの人工物でありわれら人間たちを魅了する、金貨で金貨を買収する空騒ぎがおわったのちに、なにもない時代、なにも変わらない時代、長い長い余白の時代が、半世紀も過ぎて、この嵐のあとの静けさはもう静けさではない、たしかに静けさから耳を…

鬼生田貞雄「黒い羊」刊行(8/15)のおしらせ

今年で五十八年間、郷里である福島からも忘れ去られていた小説家、鬼生田貞雄。 そのマスターピース「黒い羊」を八月十五日、終戦記念日にアマゾン(kindle)で販売予定です。(価格は五百円前後、読み放題の対象とする予定)。 「衆目」が直木賞候補、ラー…

宗教ぎらい

いかに私、ひとりが悪態をついていても無駄だ。 そもそもが、ときおり世界は美しいのだと、そう私に感慨を迫ることがある、それを私はどのように屈託をして、嗟嘆をして、たとえば地方のメシのまずさにぶちキレながらも、知っていた筈だ。 たとえばある昔の…

(犬の日記)七月五日

朝、七時におきて制作が進む小説を十枚書き終えたのが昼すぎ。それから鬼生田貞雄「黒い羊」の書籍化用デジタルデータ化の二章部分を終わらせて、四章部分に取りかかりはじめる。おもにレコードからはHIPHOPを流して聴き、食事は炊飯器に残っていたき…

(犬の日記)七月二日 中篇小説の制作はじまる

七月二日。今は夜の九時四十二分だが、きょうの朝になにをした、といったようなことはあらかた忘れてしまった。そうだ。朝、起きると連れがまだ出勤しておらず、きょうはすこし遅くに出ると言っており、なにか食べたいものはと訊くと答えたナポリタンを、ト…

社交と読書

じゃあきょうは、――友人にさらりと訊かれたことを切っ掛けにして、前の日のモテる、モテない、みたいな世にもくだらない文章を書いたわけだけれども、もうちっと、建設的にそれを敷衍していこうか。 とはいえ、まあ、といったところから。 たしかに、社交術…

本読んだり小説書いたりしているとモテるか否か問題

この歳になってふとおもうのだが、小説なり、本をひとよりも読んでいることや、本を読んでいることによっていろいろなテクニカルタームだとか文学史的な知識を身につけていることって、くだんないと(ふと)おもう。ふと、というこの「ふと」にはこれまでは…

言葉の影

また、きょうから二百枚の中篇に取りかかる。 師匠。 師匠は、成長はゆっくりやって来るといったが、たしかに、いかなることも成長となりうる、そうだったのかもしれない――。すくなくとも私たちはいかなることからも学ぶことは可能だ。 だが酷く心ぼそくなる…

本格小説について

本格小説(上) (新潮文庫) 作者:美苗, 水村 新潮社 Amazon [新装版]血と骨(上) (幻冬舎文庫) 作者:梁石日 幻冬舎 Amazon P+D BOOKS 宣告 上・中・下巻 合本版 作者:加賀乙彦 小学館 Amazon 本格小説、というタームがSNSのタイムラインに流れてきて、お…

(犬の日記)ふたたび六月二十八日からはじまる日記

レコードショップをハシゴして新宿へと帰る。降雨に人身事故によるダイヤの乱れが生じた新宿地下駅は、それに加えて工事中であることもあって、そこを通い慣れたホストやホステスであっても道に迷うのではないか、という気色である。迷おうが迷うまいが(白…

(犬の日記)本質的に六月二十八日の日記

下北沢のレコード店「フラッシュ・ディスク・ランチ」 六月二十九日。先日、先々日と東京に行っていた。きのうは降雨の東京であったが、酒を抜いているためなのか矢鱈と元気に、下北沢のフラッシュ・ディスク・ランチへ行きレコードあさりなどをしていた。す…

パイプのゆくえ

パイプっていうのはいいぞ。 大麻やってんじゃねえのか、って誤解を受けるリスクはあるけれども。 風情がいいもんだ。 なによりも、紙巻きの煙草とちがって、パイプっていうのは粘膜で吸うから、酒を飲んでいる時なんかに重宝するんだね。 私なんて胃弱だか…

ガルシア=マルケスなんて、たいして面白くないじゃん

浅田彰もどこかで言っていたけれども、マルケスって全然、いい作家とおもわない。いかにもノーベル文学賞って感じだし。 いろいろあるが、ひとまずマジックリアリズムについては、カフカが草分けだろう、と私は考えているのね。 ハプスブルク帝国下のチェコ…

食べものの話

シラフだからふと考えた。 死ぬことになった時にこのじぶんが食いたい、と云っているもんとは一体なんであろうか。 サッポロ一番でも食っていろ、というのは無しで。 オーバカナルのパナッシェなのだろうか。 病身かなんか、なのだろう、死ぬってこたぁ。 酒…

(犬の日記)六月二十五日

昨晩は連れが「羊たちの沈黙」をテレヴィ画面で観ていたのでいっしょに観た。カメラワークが良く、トラウマや心理学化など、いろいろなシンボリックな要素が詰め込まれている、いい映画だっただろう。たぶん小説よりも良い(子どものころに姉が映画館で観て…

「私」の禁酒宣言――或いは「きみたちと飲む酒は一滴もない」

ひとが合法ドラッグにハマるのには、ドラッグに手を伸ばす以上、そこにはもともとは強い動機があったはずなのだ。と、そうしてみよう(敢えてここでは酒に合法ドラッグ、という強い呼称を授けよう。なぜならばこの記事は禁酒宣言の記事なのだから)。 私の場…

(犬の日記)六月二十三日

朝、七時すぎに起床をして、九時半に制作を進めていた中篇小説の初稿を書き上げる。大幅な改稿をしていくことになるので(前回の作でわかったのであるが、大体、七稿までつくる、つまり七回ほど全ページを赤ペンだらけにして作品を直していくと、納得できる…

(犬の日記)六月二十二日

朝八時から小説の制作をはじめる。レコードは相変わらずイ・ムジチ。下北沢あたりに行ってとにかく潤沢に手許に置いておかないと、こういうのは貧乏性ゆえになかなか新しいのを聴くつもりになれず、大きな問題としてそもそも今クリーナーのキットすらもが手…